建て主のご両親が暮らしていた、築30年ほどの住宅を住み継ぐための改装。
既存建築が丁寧に作られたものだったため、できるだけ手を加えずに、これからの建て主の暮らしに寄り添うように計画しました。
高い天井の居間・食堂は既存の格子天井を白く塗装し、照明を変えることで、明るくすっきりとした空間へと生まれ変わりました。
玄関や廊下は、いかにも和風の萌黄色だった壁を、彩度を落とした色で上塗りするだけで、落ち着いた印象になりました。
既存建築の重厚さに合わせ、仕上材は上品で流行り廃りのない長持ちするものを選びました。
また、水回りは使いやすいよう間取りを変え、設備機器も一新し、
居間食堂には、床暖房を導入し暖かさを確保しました。
建材が高騰する中、今あるものを更新し、住み継ぐことが今後増えていくように思います。
これからの数十年、また時を重ね、より良い建築になっていくことを期待します。
熊本市の郊外に建つ小さな平屋の住宅です。
敷地の周囲は倉庫や工場に囲まれており、南側は、道路の先に畑一面ののどかな風景が広がります。
予算から、規模や形状はおのずと限定されましたが、
その中でできる限り日々の暮らしの喜びや心地よさを感じられるように計画しました。
家族が集まる場所は、景色の良い南側に開きました。
建具の高さや壁の仕上げの切り替えを1.8mとし、上は真っ白、下は小国杉で温かみを加えました。
そうすることで、浮かび上がる白い勾配天井に包まれた柔らかい居場所ができます。
また、壁の切り替えが水平方向に広がりを与え、視線は南側の庭や田畑へと抜けていきます。
隣の部屋から見通すと、壁1枚で隔たれただけの隣の部屋との間に色違いが生じ、奥行を感じられます。
単純なプランでも、ちょっとした工夫で、豊かな空間になるように考えました。
熊本市北区清水本町の小さなドーナツ屋が付属した住宅。
周辺環境は住宅が密集する斜面地であり、敷地の東西はそれぞれ道路に面しています。
昔ながらの商店街よりアクセスでき、よく見える東側にお店の顔を作り、
落ち着きのある西側を住宅のアプローチとしました。
当敷地より南側隣地が高く、見下ろされる関係にありますが、
開口の高さを調整することで、光を採りつつ、視線は遮っています。
反対に北側隣地は下がっており、2Fからは入り組んだ家並みや山の景色が楽しめるため、
積極的に開口部を設けました。
平面計画は1F北側に水回りや収納等を配置し、その上に個室を均質に並べ、
南側は吹抜が通るようにしました。
さらにシナ合板貼りの壁が階段から水平に伸びる2Fの手摺壁へつながっていき、
建物の長さを強調することで、コンパクトながらも、のびやかな空間になっています。
また、吹抜の天井を各個室入口の欄間を通し室内へつなげることで、
どこにいても家族の気配をかすかに感じられるひとつ屋根の下の家を目指しました。
急勾配の天井は階段の勾配に合わせることで生まれたものですが、
2階へ上がると壁のように迫ってきて、包み込まれるように感じられます。
熊本市の幼稚園、園庭に設置した木製ジャングルジム。
木材を格子状に組み、一部に格子を活かした、ひらたい家と、とんがった家、トンネル、吊り橋といった様々な居場所を作りました。
ジャングルジムの基本動作、「のぼる、くぐる、ぶらさがる、とぶ」に加え、「はう、わたる、ごっこ遊びをする」など、
子供たちがそれぞれの遊びを見つけられるよう考えました。
木製らしいあたたかみのある遊具は、子供たちの優しく大事に遊ぶ心も育んでくれそうです。
友人が代表を務める、ちかけんプロダクツとの共同プロジェクトです。
熊本県御船町の山の上に建つ特別養護老人ホーム華ほたる。
温泉施設として親しまれた既存の建物を用途変更・増築したプロジェクトです。
延床面積は2,000㎡を超える平屋で、RC造、鉄骨造、木造の混構造です。
建物の裏側には御船町が一望できる庭が広がります。
既存建築物内での平面計画であり必要諸室は決まっているため、設計の自由度は低く、
さらに法規や工期、予算等の条件により、使える素材にはかなりの制限がありました。
そのため、既存建築物をできるだけ生かしながら(家具や照明も既存のものをできる限り利用)、
新しい内装材の色や材質、それらの組み合わせを一つ一つ丁寧に選ぶことで
落ち着いた空間になるよう心がけました。
既存建築物が素晴らしかったこともあり、それだけで3つのユニットは
それぞれ個性豊かな場所となりました。
老人ホームにしてはシックな色使いで素敵だと好評で、本プロジェクトで
色や素材の可能性を改めて実感しました。
入居者の方々が我が家のように暮らせる居場所になればと思います。
佐賀県みやき町に建つ、大屋根の平屋住宅です。
敷地の北側には小川が流れ、背振山が望めます。
周りは田に囲まれ、敷地内には既存の庭が広がります。
個室や水回りなどを4つのボリュームに分け、
それらにより囲まれた空間を居間・食堂、廊下としました。
プライベート空間はしっかりと壁で区切る一方で、
居間・食堂は、外部との境界を全て開口部とし、
かつ、屋外と屋内を同じ素材にした天井・床・壁により、
豊かな外部空間とひとつながりに感じられるよう計画しました。
class archiとの共同設計。
白川のほとりに建つ、築50年のアパートの1室を、事務所としました。
作りながら考えたかったので、自分たちで工事をしました。
休日に少しづつ作り、時間もかかりましたが、描いたものを自分たちの手で作ることは、
刺激的で、あちらこちらに愛着も芽生えます。
北側は白川の景色、南側は太陽の光、どちらも一度に感じられるよう間仕切りを壊し、
仕上げを統一することで、小さいながらものびやかな空間にしました。
上通の美容室。
書道教室に使われていたビンテージマンションの1室を解体して、光と緑があふれる空間に作り変えました。
真鍮や革など、古びてよくなるものが好きな建て主のために、美しく年を重ねる素材(真鍮、珪藻土、木材、コンクリート)を用いました。
路面店の美容室と異なり、カットスペースが奥になるため、客が作業スペースを通る動線となりますが、美容室全体に光や街路樹の緑を感じられるよう、腰壁のみで区切るプランとしました。
神奈川県、小田原市にあるフレンチレストラン。
厨房を中心に据えることで、客席と一体感が生まれる。
米田周平氏、上野貴史氏との共同設計。